チャイナプラス、今年も見学に行って来ました。去年は上海でしたが、今年は広州での開催です。間違えて最初に上海ゆきのチケットを取ってしまったので、差し替えに往生しました、、、
フライトの時間との兼ね合いで、今回広州へは高速鉄道で入りました。 香港から1時間!めちゃくちゃ早くてびっくりです。広州といえば、やはり広州タワー。スカイツリーが出来るまでアジアで最も高い塔だったのはご存知でしょうか?スカイツリーが634mなのは、この広州塔(600m)に勝つためだったと言う人も中国には結構いるそうですが、どうなんでしょう。でも先端の尖った柱を取ると広州塔の方が高くなるので、「ずるいな」と思う中国人が居てもおかしくないですね。
チャイナプラスの会場は、「広州国際会展中心」。広州交易会(広東フェア)をやる展示会場ですね。会場の規模は幕張メッセが左右に2つあるイメージをして貰えれば。今回のチャイナプラス2019はその内半分を使って開催されたので、前回の上海虹橋と比べると二回りくらい小さい印象を受けました。それでも広いですから、チャイナプラスの期間中は毎日2万歩超えはしていましたけど。
残念ながら、私は中国語が話せないので今回は通訳同伴です。取引先の女の子に2日間アルバイトで付いて貰いました。通訳を挟むと本当の意味で意思疎通が難しくなるので、ビジネスでは極力挟みたくないんですけれど中国の人は英語が出来ない人が多いし、自分はまだ中国語でコミュニケーションが取れないしで仕方ないです。まぁ、会話は相手の表情が9割なので通訳に頼り過ぎなければ何とかなるか、という事で。
昨年の報告でも挙げたかも知れませんが、チャイナプラスでまず驚かされるのが色材の豊富さです。幕張メッセの2棟全部がマスターバッチと添加剤屋さんの出展で埋まっているイメージです。例えば黒のマスターバッチ専業だけで軽く10社以上出展してたりします。これだけの色材を消費して、市場が回ってゆくということを考えると気が遠くなる気がするんですがこれが事実なんでしょうね。
それから、技術を惜しげもなく公開する企業が多いことも印象的です。日本では「金型は顧客情報にあたるので見せられない」という企業がほとんどですが、かなり踏み込んだ設計をした金型まで、たくさん並んでいるのがチャイナプラスの特徴です。
写真はボールねじを使ってギア抜きをする金型ですが、このノウハウを公開するだけではなくてご丁寧に外から見えるようにアクリルで作って実演しているという、、、スタートアップビジネスでは、世界的なトレンドとして特許の無効性が理解されるようになってきています。PCT出願をしない限り国境をまたいだ保護は得られないし、出願しても現地で特許紛争になった際の費用が負担できないかも知れない。結局早いもの勝ちで市場を抑えた方が賢いという理解で、むしろ先に情報を開示した方が、市場の信認も得られるし仲間も集まり易いですもんね。こうした知財に対する考え方はアメリカも中国も同じなのでしょう。
この点、日本の企業は2週位遅れているように思います。未だに中国はパクりという人も居るのですが、多くの企業はそこはもう通り越して特許も取っているし、その上で特許の無意味さを理解して秘密情報をオープンにし始めているよ、と。ただもし中国のように情報公開すると、それに関連する取引先の意識も変わらなくてはトラブルを起こしますから、日本ではこうした情報公開はしばらく出来ないでしょうね。
幸か不幸か、世界では今また情報をオープンにすることの是非が問われて来ています。皮肉なことにもう一周回って日本的な秘密主義はそれ程遅れていない事になるかも知れませんけども(笑)。この他に気になったのが材料展示でしょうか。
中国や韓国の材料メーカーはこの数年自動車を狙っているようで、展示の主流は自動車関連が多いですね。Maasとか、家電が多い中韓メーカーには有利な流れが来ているからでしょうか。
対して日本の材料メーカーは医療機器関係が多いです。やはり老人パワーは日本に歩がありますから、こうした狙いは的確だなぁと感じました。
そうそう、欧州企業の出展も多かったのですが、ドイツのアーブルグが成形機とFDM造形機をくっつけた3Dプリンターを出展していました。ほかにもローカル企業の成形機やリサイクル設備の展示が膨大にありましたが、特に強い印象もなかったので割愛致します。
総じて振り返ってみて、チャイナプラスは昨年と変わり映えしないですが、中国のプラスチック産業が向かっている方向を再確認する意味ではまぁ見る価値はあるかな、と。来年はまた上海での開催ですから、興味ある方は是非。 上海の方が広州より観光スポットが多いですからね。
折角なので、トンガンの金型工場も見学して来ました。
中国の工場はゆくたびにどの工場も質が上がっていますよね。
面白かったのはEDM2頭タイプ。 大きい金型だと放電加工を同時に2箇所できるので便利なんだとか。ナルホドナー。小さい金型が多いウチの会社だと気づかない視点ですね。
何とこの金型工場は、トンガンの有名な試作メーカーさんの真横でした。この試作屋さん、3300トンの成形機を貸してくれることで有名なんですよね。ちょうどトライが近づいているみたいで、材料が準備されてました。2~3ショットで1体とか使っちゃう感じなんでしょうかね?ちなみに、1日のトライ費は50~60万円だって。思った程高くけど、材料費はやっぱり別なんだろうな。
まぁ、いつも通り最後はシンセンの華強北に立ち寄るわけですが。でもびっくりするくらい不景気ですよ、今。アメリカとの貿易摩擦は本当に洒落にならないレベルなんだということが、肌で感じられます。大通り沿いに良くある客引きおもちゃですが、あまりに人が居ないのでそれすら誰も動かしてない。奥に入ると小規模なブースを構えてた店は悉く閉鎖してます。
とは言え華強北は常に新しいプロダクトが並ぶので楽しいです。昨年末には余り並んでいなかった対話型ロボットが大量に並んできました。結構かわいい奴が多くて欲しくなっちゃったんですが、まだ高いなぁ。
スマートホームの展示は年(月?)を追う毎にどんどん充実してゆきます。写真は小米が運営しているスマートホームのデバイス展示館(緑米!)。展示品の質も高く、また通信プロトコルも既に共通化がなされているようで、いつ本格的な普及が始まっても万全な体制が出来ているのが良く分かります。
プロペラタイプの3Dサイネージは既に価格下落が相当程度進んでいました。 半年前と比べて製品の価格が1/3になってる。日本でも世界でも、まだ普及どころかようやく市場に顔を見せ始めたばかりだというのに、ですよ。
華強北の強いところはこの開発のスピード感なんですけど、同時にそこが弱点なんだと気づかされます。やっぱりプロダクトは最終ユーザーに受け入れられて初めて市場が出来上がるのに、シンセンのスピードで開発競争が進むと、消費者がそのプロダクトを理解する前に価格下落が進んでプロダクトの魅力やワクワク感が失われてしまうでしょう。結果として市場が立ち上がる前に潰れてしまう。シンセン発のH/Wユニコーンは多いですが、多くが海外出身者によって創業されていると聞きました。シンセンの中に居ると、これは分からないかもですね。
以上、チャイナプラス(と華強北の定時)報告でした。