ハードウェア開発において、使用する環境に合わせてプラスチック筐体の素材を選定することは重要なポイントとなります。素材には様々な検討要素があるのですが、今回は難燃性(=どれだけ燃えにくいか)という観点でどのような差があるのかを実験してみました。
【手順】
UL規格V0~V2の試験方法を参考にし、以下1から5の手順で実施。
- 固定台にプラスチック試験片を垂直に固定する。試験片下端より30cmの地面に5cm角の綿を置く。
- 火力調整済み(約50W)のバーナーを試験片の下端にあて、10秒間加熱する。この時、バーナー先端と試験片の下端は10mm間隔を維持する。
- 残炎が消えるまでの時間を比較する。
- 残炎が消炎後、再度10秒間加熱する。
- 残炎時間および無炎燃焼時間を比較する。綿が燃えたか、試験片が支持クランプ部まで燃えたか確認する。
実験1:ABS
- ABSは一度着火すると燃焼がおさまらず、支持クランプ部まで燃焼が到達した。
- 燃焼の際、黒い煙を放出していた。
実験2:難燃ABS
- 難燃ABSはバーナーを遠ざけるとすぐに燃焼がおさまり、残炎時間、無炎燃焼時間ともに短かった。
- 試験片からの溶融物の滴下は見られなかった。
実験3:ポリカーボネート
- 残炎時間、無炎燃焼時間ともに短かったが、溶融物が発生した。
実験4:難燃ポリカーボネート
- 難燃PCはバーナーを遠ざけるとすぐに燃焼がおさまり、残炎時間、無炎燃焼時間ともに短かった。
- 試験片からの溶融物の滴下は見られなかった。
実験5:ポリプロピレン
- PPは一度着火すると燃焼がおさまらず、支持クランプ部まで燃焼が到達した。
- PPは燃焼の様子に特徴があり、プラスチックが液化し滴る様子が確認された。
【まとめ】
難燃グレードは、難燃でないものに対して燃えにくいことが確認できました。接炎リスクのある環境下で使用するプラスチック製品には、十分に素材の難燃性を検討する必要があると言えます。