【buoy事業】
事業の概要
’buoy事業は海岸に漂着しているプラスチックごみをそのままアップサイクルして販売することにより海岸漂着ゴミをなくしてゆくソーシャルビジネスです。
’buoy事業の背景となる技術として、プラスチックごみを分別することなく一体で商品に成形する当社独自の技術の開発があります(特許取得済み)。この技術により従来はほぼ100%埋め立てもしくは焼却廃棄されていた海岸漂着プラスチックごみを独自の商品にアップサイクルすることが可能となりました。
また’buoy製造技術は、従来にない非常に特殊な成形技術であり、出来上がった商品が一つ一つ全て異なる色と模様を持つという特徴有しています。これは商品の付加価値を向上させるアップサイクルとしては非常に適しています。
’buoy事業はこの技術を背景として、海岸漂着プラスチックごみを回収するシステムを構築するためにスタートしました。
具体的にはボランティアが回収した海岸漂着プラスチックごみを我々が有価で買取りこれを’buoy商品としてアップサイクルします。またすべての商品にはそのゴミが拾われた産地と拾ったボランティア団体の情報を記したQRコードが記されていますこれにより’buoy事業商品を購入した消費者はそのゴミが誰によって拾われどこで拾われたかを知ることができます。
このようにしてゴミに付加価値をつけることによって従来のようにただ捨てられるだけでなく逆にこれがゴミを拾うボランティア団体と消費者とつなぐエモーショナルなプロダクトとすることで付加価値をつくることが’buoy事業の核となります。
なぜこの事業モデルなのか
プラスチックのリサイクルには多くの方法があります。より多くのエネルギーを投入することで、より質の高いリサイクル素材が得られます。ただ現実にはどのようなリサイクル手法であれ、効率・品質面でリサイクル材料はバージン材料に劣ります。
国際的に協調してバージン材料に課税することで相対的にリサイクル材料を安価にすることが解決策として有効ですが、こうした政治的な解決は我々民間企業の解決法とはしづらい手法です。
このため、buoy事業ではバージン材料にはない「付加価値」という点に注目しました。
木、皮、石、鉄などの天然素材では長い歴史の中で人類が素材に手を加えてきた歴史があるので、「手作業」「工芸」といった素材の機能以上の付加価値が認められています。しかし歴史の浅い人口素材であるプラスチックには「勝手に」「自動で」製造されてゆくイメージが強く、人の手が加わることによる付加価値を社会が認められません。
人工素材であるプラスチックにも天然素材と同様に人の手が加わることで価値が認められれば、それが付加価値になりえると考えています。’buoy事業はごみ拾いを含めて、人の手が加わることによって工芸的な付加価値が生まれることを伝えます。
人の手が加わる、という「エモーショナルな価値」を作る活動は、プラスチック素材を循環させる仕組みを明確に見せることでもあります。拾う人、手伝う人、作る人、売る人、使う人、こうした繋がりを可視化し、感情に落とし込むことは最終的にはプラスチックを再生する社会の合意を生む土壌となり得るものでもあると考えます。
国際協調課税にせよ、ケミカルリサイクルできる種別の制限にせよ、まず社会的に問題を認知させ、社会合意を取り付けてから規制の仕組みを作ることが必要です。
プラスチック問題は多くが経済的な観点のみで議論が進められてきたことから、不経済性が隠れていた部分の問題が放置されてきた側面があります。感情的な観点の導入は別視点として問題をあぶりだす原動力となりますが、’buoy事業はこうした側面を持つことで社会的合意を作る際の土台の一つとなり得ると考えています。
だからこそ、経済性を超えた観点からプラスチック素材を見つめなおすことが重要だと考え、当該モデルに行き着きました。
【社会的インパクト】
2050年には海の中のプラスチックの量が全ての海洋生物の乾燥重量を追い抜くと言うことが大きな社会問題として提起されています。こうした海洋流出プラスチックのうち、およそ80%はアジア地域から流出していると言われており、かつその多くが日本海流に乗って日本近海を漂流していることはあまり知られていません。
中国や韓国などから大量のプラスチックごみが漂着する南西諸島、九州西北岸、日本海沿岸の市町村にとっては、漂着プラスチックごみは非常に大きな費用負担となっていて地方自治体の大きな問題となっています。そして海岸に漂着するプラスチックごみはほぼ100%埋め立てもしくは焼却廃棄されています。
これら費用は国からの補助金によって賄っている自治体も一部にはありますが、多くの自治体では自治体の負担であり、中にはゴミを極力回収しない地域があることも事実です。また国からの補助金は年々減額されており、増え続ける漂着ゴミに対して実効性を持たなくなりつつあります。
結果回収されなかったプラスチックごみはやがてほかの地域に漂流して行き、その過程の中でより多くの細かいプラスチック片となって拡散して行きます。
buoy事業はこうした海洋プラスチックごみを回収することに経済的自律性を持たせます。そして日本やアジアといった上流地点で回収することで、細片化する前のプラスチックごみを効率的に回収し続けることを可能にします。
プラスチックは親油性で海洋漂流中に浮遊油分を吸着して化学的に非常に汚染されます。こうした海洋プラスチックが細片化して魚類に捕食された際、どの程度の生物汚染が進行するかについてはまだ良くわかっていません。というのも海洋流出プラスチックごみが急増したのは、この10年程度だからです。
例えば生分解性プラスチックに置き換えれば解決するか否かの判断ができるほど、検証材料がないのが現状です。
だからこそともかくも海岸に漂着したプラスチックごみを大きなうちに回収して処分する必要があります。 ’buoy事業はこうした問題に対して自律的に民間の中からゴミを回収する仕組みを生み出そうとするものです。この意味において、海岸漂着プラスチックごみ問題に対して唯一解決策となりえる可能性があります。