buoyが目指すもの

海洋漂着ごみの現実

海洋プラスチックごみは年間800万トンが流出し続け、これまでに累計1億5千万トンが海洋に漂っているとされています(サイエンス誌による2010年のデータからの推計)。

既にかなり古いデータであり、現在の流出量はこれをかなり上回る数量になっていると推測されています。

こうした世界の海洋プラスチックゴミは、主な10の河川(中国5、東南・南アジ3、アフリカ2)から流出するものが多く、全体の約90%を占めるというレポートもドイツのUFZから発表されています。

10大河川

そして最も排出が多い国は中国であり、その後にアジア諸国が連なります。 アジア域全体で世界の海洋プラスチックごみの80%を流出させているとも言われているのです。

アジアで流出した海洋プラスチックごみの多くは、海流にのって日本に漂着することとなります。日本は世界最大の海洋プラスチックごみのホットスポットなのです。

日本近海の海流

ですが多くの日本人にはそこまでのゴミが漂着している印象がありません。

これは人口の多い太平洋側では、偏西風によって絶えずゴミが沖へ流される力が働いているので多くの日本人の目に留まらないからです。

一方で冬の日本海や九州西岸などでは想像を絶する海洋漂着ごみが打ち上げられています。

実際の漂着地の海岸(左:若狭湾、右:対馬北西岸)

こうした地域では地元のボランティア団体の方々がやむを得ずゴミの回収を続けて下さっています。もしこうした地域でゴミが回収されなければ、これらのゴミは漂着地から更に海流に乗って移動して行き、やがて太平洋を半周する頃には大量のマイクロプラスチックとなって魚に捕食されてゆくことが有力な仮説となりつつあります。

私たちが思うよりずっと早く、マイクロプラスチックの影響で魚が食べられない未来が来るかも知れないのです。

buøyが目指す未来像

現在、太平洋ゴミベルトでごみを回収しようとしているオランダの団体などがニュースを賑わせています。しかし彼らが回収するより遙かに大量のプラスチックが日本に漂着していて、これを放っておくことはとても大きな問題になります。例えば長崎県の対馬市だけでも年間3,000トン以上の海洋プラスチックごみが海岸に漂着しているのです。

こうした日本に漂着するプラスチックゴミは、地元のボランティア団体さん達が主となって回収していますが、漂着が多いのは冬の日本海や九州西岸、あるいは離島部です。

冬の日本海など、地元の方でも近寄らないため多くの方に知られずにゴミの回収をしている方がたくさんいらっしゃるのです。

「buøy」の製造を通してこうした人達の存在を知るにつけ、彼/彼女達こそ主役で、かつ多くの人々に知って貰うべきヒーローなのだと、私たちは思うようになりました。

だから「buøy」は拾ったプラスチックをヴィンテージ材料として買い取っています。そして全ての製品に採集地を記しています(そしてそこから採集者が分かるように)。

それによって「buøy」を購入してくれた方からのメッセージ---こうやって使っているよ!とか、拾ってくれてありがとう、といった---が採集者に届くことで、きっとボランティアの人達の心に灯をともすことが出来ると思うのです。

「buøy」の製品開発は、環境の改善と同時に地域産業の振興という目的も達成することができる、という点で意義ある活動だと考えています。日本での活動で経験を蓄積したのち、こうした海外の河川で同様のプロジェクトを広げてゆくことが「buøy」の目指す世界です。

現状の問題を悲観することも時には大切かも知れませんが、私たちは未来を少しずつ着実に良くしてゆく活動を行ってゆきたいと考えています。

参考:海洋漂着プラスチックゴミのリサイクルについて

海洋漂着ゴミに関して言えば、リサイクル等の多くの解決策は無力です。

多種のプラスチックが混在していること、漂流中に化学汚染が進んでいること、塩分や貝類が付着していることなどが原因です。結局、海洋漂着プラスチックはお金を払って埋立されるか、熱回収も出来ない燃焼に回されるかして処分されているのです。

この事実がゴミを拾う人の心を折ってしまうのです。

幾ら苦労しても毎年漂着するゴミが減ることはない。そして自分たちが苦労したゴミは各自治体の税金を使って燃やすか埋め立てられるしかないというのは、本当に苦しいことだと思いませんか?

遠方で海岸のゴミ拾いに協力することは出来なくても、ボランティア団体の拾ったゴミで出来た製品を買うことで金銭的にも支援が出来たり、それが自分の生活で大切に使われていることを見せることで精神的に支援が出来たりするかも知れません。

buoyの活動イメージ

プラスチックゴミとして今まで嫌われていた存在ですが、こんな形でゴミの漂着地の人と漂着しない地域の人をつなぐ架け橋となることができれば、捨てられたプラスチックの子達にも意義があったと、プラスチック好きの私たちは思っています。

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