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プラスチック素材 (主要10用途)
プラスチック素材には、正式名と略称とがあります。正式名は化学っぽいカタカナの名前、略称はアルファベット2または3文字の名前です。各素材メーカーはそれぞれの素材に各社ごとの、製品名を冠して販売しています。
しかし特定の素材メーカーがあまりに有名な場合、製品名が素材の正式名のように呼ばれることもあります。たとえば有名なナイロンは素材の正式名ではありません。正式名はポリアミドという名前です。しかしデュポン社の製品名であるナイロンという名前が余りに有名なので、通称としてナイロンという呼び方が定着しています。
似たものとして、ポリアセタール(正式名)がジュラコン(製品名)でよばれたりしています。 下記では正式名と略称で記載しました。
@ 特に要望が無い場合
最も一般的に選ばれる素材としは下記の3つです。
・ABS(略称:ABS)
・ポリプロピレン(略称:PP)
・ポリエチレン(略称:PE)
一番硬い普通のプラスチックが
ABS
、乳白色でちょっと柔らかいのが
PP
、柔らかくてボトルなど食品関係によく使われるのが
PE
です。
いずれも安価で使い易い素材です。
A キレイな外観が欲しい
外観部品として一番使われているのは
ABS
です。安価で成形性が良く、きれいな外観が作りやすいためです。また素材着色も自由で、印刷ののりも良いため、成形後の加飾印刷もし易い素材です。
ABS
は樹脂の中で唯一メッキが出来る素材でもあります。
ちなみに最近
ABS
の外観と
ポリカーボネート
の強靭さを併せ持った
ポリカABS
が普及しており、携帯電話の筐体などに使用されています。
また外観は欲しいが材料費は節約したいという場合には、
ポリスチレン(略称:PS)
を使うこともあります。子供向けのおもちゃ外装などに
PS
を使っているのを良く見受けます。
B 落として壊れては困る部品(耐衝撃性)
特に落として割れたりして困る部分には
ポリカーボネート(略称:PC)
がつかわれます。
PC
は非常に強靭な素材で、機動隊の盾に使われるほどです。ただ元の素材が透明なので、着色しても若干透明感が残ってしまうことと、外観的には余りキレイにならない点が弱点ではあります。
同様に強靭さを持つ素材として、
塩ビ(略称:PVC)
や
ポリアミド(略称:PA)
があります。
PVC
は安くて良い材料ですが、ダイオキシンが出ると言われて昨今はほとんど使用されなくなっています。
PA
は価格がネックとなりやはり余り使われません。
C 透明さが必要となる場合
透明さを持つ素材としては、下記のような素材です。
・アクリル(略称:PMMA)
・ポリカーボネート(略称:PC)
・ABS(略称:ABS)
・塩ビ(略称:PVC)
最も有名なのは
アクリル
で、透明度も高く(全光透過率90%以上)キズもつきにくい素材です。ただとても割れやすい点が難点です。その為最近は割れにくくするためにゴム成分を添加した
アクリル
が普及しています。
同じく
PC
も透明度が高く、しかも割れにくい素材です。ただ
PC
はキズがつきやすい点が難点です。
ちなみに最近のめがねレンズはほとんど全て
PC
ですが、これはキズがつかないようにガラスの薄い皮膜が表面についています。
塩ビ、ABS
にも透明グレードがありますが、透明度はあまり高くなく、あくまで雑貨レベルにとどまります。
PETボトルに使われる
ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)
も透明ですが、特定の薄いフィルム成形時に透明に製造できるだけなのでこの中からは外しました。
透明な部品の生産については、材料を透明にするだけではなくて、生産上も様々な問題をクリアしなければなりません。
D 熱がかかるところで使いたい(耐熱性)
プラスチックは総じて熱に弱い素材ですから、熱がかかる部分には金属やゴムなどを使用するのが一般的です。
しかし自動車のエンジンルーム内や電気基板のハンダづけ工程など、かなりの高温環境下でもプラスチックが使われています。
このような場所に使用される耐熱性の高いプラスチックには、次のようなものがあります。
比較的価格の低いもの
・ポリカーボネート(略称:PC)
・ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)
多少高額ながら、より耐熱性の高い素材(エンプラ・スーパーエンプラと呼ばれています)
・ポリアミド(略称:PA)
・(略称:PPS)
・(略称:PBT)
さらに上記の素材にガラスファイバーやセラミックを入れて耐熱性をより高めた、ファイバー添加グレードとよばれるものも多く発売されています。
以上は熱可塑性のプラスチックですが、熱硬化素材も耐熱性が高いことで知られています。
ただ熱硬化性樹脂は素材価格は安いものの、加工費が高いことから高電圧端子などの特殊な用途に限定されています。
・フェノール(略称:PF)
・ユリア
E ヒンジのように曲げるところに使いたい
安価なケースなどでは、ヒンジ部分もプラスチック部品が一体に 出来ています。 薄い部分が屈曲する構造になっているアレです。
このような使い方をすることが出来る素材として、下記のものがあります。
・ポリプロピレン(略称:PP)
F 歯車のような機構部品
歯車のように内部構造部材として使われる部品の素材も、なんでも良い訳ではありません。
隠れてしまうので、これらの部品には見た目は要求されませんが、滑り性や、耐衝撃性が求められることが多いためです。特に下記の素材が使われることが多いようです。
・ポリアセタール(略称:POM)
・ポリアミド(略称:PA)
G 薬品がかかる(耐薬品性)
多くのプラスチックは、薬品に弱いものです。 酸やアルカリといった薬品がかかると、溶けたり割れたりしてしまいます。
このような用途に用いられる素材としては、下記の素材が挙げられます。
・ポリプロピレン(略称:PP)
・ポリエチレン(略称:PE)
・テフロン(略称:PTFE)
このうち
テフロン
だけは非常に高額です。
しかし薬品に強い素材としてとにかく普及していますから記載することとにしました。スーパーエンプラと呼ばれる一部の素材もこの耐薬品性が高いことで有名です。
H 屋外で使いたい(耐性)
これが意外に知られていないことですが、ほとんどのプラスチックは太陽の光にとても弱いのです。太陽光に含まれる紫外線によって素材が劣化して、割れたり壊れたりしてしまいます。
従って基本的にプラスチックを屋外で使うことは余りお勧めできませんが、それでも下記の素材はかろうじて屋外で使用されることに耐えうるでしょう。
・塩ビ(略称:PVC)
・AES(略称:AES)
・ポリカーボネート(略称:PC)
I 食品衛生法の基準をクリアしたい
食品衛生法で食べ物の包装容器に使うプラスチック素材は、細かく規制されています。 煮沸した際に溶出する成分を測定して、その上限が定められているのです。
食品に使われるプラスチック部品は、毎回この試験を受けることが原則ですが、実際にはすでに食品衛生法の試験をクリアした素材が食品衛生法通過グレードとして販売されています。
このような素材には、下記のものがあります。
・ポリエチレン(略称:PE) ・ポリプロピレン(略称:PP)
J 量を使うので、安くしたい
雑貨など、とにかく素材の費用を下げたいときに使用されるのが下記の素材です。
・ポリプロピレン(略称:PP)
・ポリエチレン(略称:PE)
・ポリスチレン(略称:PS)
K 柔らかい
身体につけたり、質感が求められたりすることから、柔らかい素材が流行っています。 従来はゴムで製作していましたが、コスト面から加工費の安いプラスチック系材料に置き換わりが進んでいます。
これらの柔らかいプラスチックとして下記の素材が挙げられます。
・ポリエチレン(略称:PE)
・シリコーン(略称:?)
・熱可塑性エラストマー(略称:TPE)
このうち
シリコーン
は非常に高額な材料ですが、不純物が少なく体に与える問題が少ないので、特に医療用途で普及がすすんでいます
またエラストマーはその他の柔らかい熱可塑性プラスチックの総称ですが、比較的高額な素材が多いものです。しかし加工費が安いことから、近年ゴムからの代替がすすんでいます。
色の選択
プラスチックの素材では、原則として既製色というものがありません。
つまり材料メーカーが「顧客のために基本12色を用意しておきました!」というような親切な材料は無いのです。
あるものといえば、他の色に染めやすくするために一切の色材を含んでいない「ナチュラル」と、他の色を全て受け入れない「黒」、それから素材によっては透明が存在します。
そこでプラスチック部品を作る方は、かならず自社でオリジナルに色を作る(調色する)作業が必要です。
この調色がかなりの問題点を抱えているのです。
というのは、「色」は絶対的なものではなくて、かなり主観に左右されるものだからです。
たとえばやや青みがかった青色が2つあったとして、北向きの窓で太陽光に照らしてみると同じ色にみえるけれど、部屋の中で蛍光灯の下で見ると違って見える、ということは常に起こります。
日本人は色に極めて敏感ですから、色が原因となってもめることがとても多いので、注意が必要です。
調色の流れは一般的には次のように決まります。
1.色見本帳で選択
色見本帳はDICやPANTONEといった有名な色材メーカーから販売されていますので、通常はこれを使います。
ただプラスチック業界で多く使用される白のバリエーションが、これらの色見本帳には少ないので、日本塗装工業の色見本帳を使うこともあります。
2.色見本帳で選んだ色(カラーチップ)を基にプラスチックの板見本(カラープレート)を作る
カラープレートは当然、製品で使用するグレードの素材を使って作ります。
同じ色であっても、紙に印刷されているカラーチップと、プラスチックを板にしたカラープレートとは、だいぶ雰囲気が異なります。
3.カラープレートで顧客の承認を取る
カラープレートの色には、上限と下限が設定されていることもあります。 この場合、顧客には上限と下限の範囲で色ブレがおこることを承認して貰うことになります。
以上の承認を受けた素材で製品を作ることとなりますが、製品表面に細かいシボがつくとまた色イメージが変わってしまいます。
プレートでOKでも、製品でトラブルになることも皆無ではありません。
頼む方も、どこまで色を許容するのかについて、明確な基準を持っておく必要があるでしょう。
(例えば、家庭の蛍光灯の下で使う時の色味でこの位になるようにして欲しい、とか)
添加物
あまり語られないことですが、材料は市販のものをそのまま使わなくてはいけないという訳ではありません。各種の添加剤が市場に出ているので、これらの添加剤をごく小量添加することで材料の物性を変化させることが出来るのです。
以下に主要な添加剤を記載します。
@ 帯電防止剤
よくプラスチックにホコリが付着して黒ずんでしまうことがあります。 あれはプラスチックの周りに帯電した静電気がホコリを吸い寄せて、プラスチックにくっつけてしまうことからおこります。
このような静電気を起き辛くするのがこの帯電防止剤です。
カーボンなどの導電材を入れた材料でも、帯電防止剤と同様の効果が得られる場合があります。
A 難燃剤
通常は難燃グレードとして売られている素材のほとんどは、これらの難燃剤を添加しています。 逆に言えば、従来の素材にも難燃剤を添加すれば難燃グレードに変えることが出来るわけです。
難燃グレードの材料は非常に高額ですから、こういった方法も材料費節約の一手法でしょう。
従来は安くて難燃にし易いハロゲン系のものが主流でしたが、ハロゲンの毒性が嫌われて、現在は高価なノンハロの難燃剤ばかりが市場に流通しています。
B 増量剤
近年は石油価格高騰の影響を受けて、プラスチック素材の値段もうなぎ上りです。少しでもこの影響を抑えるために各種の増量剤が市場に出回っています。非常に細かいガラスのビーズや炭酸カルシウム、果ては火山灰まで様々な素材を混ぜて少しでも使われる素材の量を減らそうとしています。
しかし万能の充填材というのは無いようで、ニーズの割には普及が進んでいません。
C 蛍光材
特に白い材料の中に入っています。素材の白さを出す為に使われています。
D 老化防止剤
E 拡散材
光学部品を均一に光らせるために使われています。自動車のスピードメーターなどに使われています。
・金 型
・成形機
・デザイン画
・成形部品
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