プラスチックでものづくり2012 株式会社テクノラボ
良く知られていることですが、光造形を始めとする積層造形技術の普及によって、試作の世界は大きく進歩しました。この積層造形の嚆矢たる光造形を生み出したのは当時の名古屋工業試験場の技官の方だったというのはビックリしますが、結局日本では認められず、アメリカの企業によって実用化にこぎつけたというのもビックリです。

当初は一億近い装置の償却費が大きく、非常に高額な試作手法として知られていました。しかし現在では装置の普及に伴ってとてもリーズナブルな価格で試作できる手法になっています。握りこぶし大の試作品で数千円〜数万円の前半程度で試作してくれるサービスビューローも増えてました。

特に新しい積層造形の手法が多く出ており、装置価格も大きく下落しています。このまま装置価格や加工費が下がり続ければ、写真のDTPのように誰でも簡単に製品がプリントアウト(?)できるのでは、と期待させるような流れになっています。

個人的にはこのようなマイクロモノづくりが普及することを願って止みませんが、おそらくこのような帰結には至らないだろうと考えています。
原因は「素材」です。
多くの日用品がそうであるように、誰もが気にせず使えて壊れないでいるものというのは、その背景に膨大な技術の蓄積が必要です。市場に出回っているプラスチックは、とてもラフなもののように見えますが、その実とてもよく完成された素材なのです。

積層造形で使用される素材は、現在このような市場に普及している素材と較べると、遥かに弱い材料です。すなわち割れ易かったり、劣化しやすかったり、変色したりしてしまいます。
マイクロモノづくりが普及するためには、積層造形の素材が市場の要求をクリアしてゆかなくては行きません。しかしその最右翼にいる光造形(と3Dプリンター)でさえ、市場規模が小さすぎて素材の開発費などとても出せる状況にありません。
おそらくこれらの試作技術は今後20年経っても試作技術にとどまりつづける以外ないのではないだろうかと思っています。

私も億単位の余剰資金があれば、素材開発に投資(投機?)したいと思いますが、そんなお金があるわけもなく…
日本政府も手垢のついた、誰でも飛びつくようなつまらない先端技術に助成するより、こういった地味だけれども確実に世の中を変える技術に助成してくれると良いのですけれどね。


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