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コラム
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さまざまな量産の手法
現在の社会では、プラスチックの製品を作るにあたっては下記のどれかの方法で作られているのがほとんどです。どんな方法があるのかを一覧表として見てみましょう。
量産方法の名称
どんな方法か
@射出成形
最も一般的な方法 高額な金型を使う
Aブロー成形
ボトルなどの中空形状を作る際に使う方法
B押出成形
バーやパイプなどの形状を作る際に使う方法
Cカレンダー成形
フィルムや袋を作る際に使う方法
DDIP成形
少量の中空形状や手袋を作る方法
E真空成形
大型の外装品や梱包パッケージを作る方法
Fコンプレッション成形
シリコーンやゴムを作る方法
GFRP成形
少量の大型造形物を作る方法
上の方法のうち幾つご存知でしたか?
消費者として生活する上では、上記8つの方法を知る必要は全く無いのですが、もし貴方が製品開発をしようと思うならばこれらの方法を知ることは貴重な知識となります。
ですからこれらの製造方法について、次項以降でより詳しく説明してゆきましょう。
@射出成形
プラスチック部品を量産する時に、最も普通に使用される量産手法がこの「射出成形」と呼ばれる方法です。 プラスチック部品メーカーに相談をすると、事前の説明なくこの量産方法を前提に話を進められることが多いですし、テクノラボも基本的にはこの方法で製品を作っています。
<作り方>
作り方は、例えば鯛焼きをイメージしてもらうと分かり易いかも知れません。鯛焼きは鯛の形を彫り込んだ金属の型に、生地を流し込んで焼き上げますね。作りたい形の反対形状の金属の鉄板に材料を入れ、固めて狙いの製品形状を作るのです。 「射出成形」でも鉄板にあたるもの(「金型」と呼びます)に素材を入れて製品をつくります。
金型(かながた)は作ろうとする部品と反対(凹)の形状を彫り込んだ金属の塊です。この金型に、融けたプラスチックを流し込みます。プラスチックの多くは蝋と同じように、冷えるとすぐに固まります。ですから金型に流し込まれたプラスチックは冷やされてすぐに固まる訳です。 そして金型から取り出せば、狙い通りの製品形状が出来あがる訳です。
実際には、プラスチック部品は鯛焼きよりもずっと精密な形状ですし、細かな模様もあります。ですから、鉄板(金型)に高圧で溶けたプラスチックを流し込む(射出する)必要があります。金型には高圧でも開かないような剛性が必要ですし、溶かした樹脂を高圧で流せる装置(射出成形機)も必要となります。
流し込みに使われる装置はご覧のような機械で、付帯設備や設置費用ま含めると1台1千万円を超えるほどです。
製造にあたっては、まず射出成形機に金型を取り付けます。金型は軽い小さなものでも数十キロ、大きなものは数百キロ〜1トン以上になりますからクレーンなどを使って取り付けます。
次にホッパーと呼ばれるところに、製品の材料となる(溶ける前の)プラスチックを入れます。
溶ける前のプラスチック材料のことは、レジンとかぺレットと呼んでいます。
ペレット材料はホッパーからシリンダーと呼ばれる部分に送り込まれ、そこで融かされて、金型の中に一気に流しこまれます。そして流し込まれたプラスチックは金型で急速に冷やされて固まるのです。
固まった頃合で、金型は自動で開かれて製品が取り出されることとなります。これらの製造にかかる一連の工程が1ショットと数えられます。
実際の量産では、1ショットが短いもので数秒、長いものでも1分強です。 そして一つの金型に複数の形状を彫っておけば、同時に複数の部品を作ることが出来ます。
射出成形が大量生産に向いた製造方法だと云われる所以です。
<補足説明:金型>
射出成形で重要な役割を果たすのが金型です。何しろこの金型の良し悪しによって製品の出来上がりの多くの部分が決まってしまうわけですから。
金型には非常に高圧のプラスチックが数万回も流し込まれます。
圧力は流し込まれる素材によって変わりますが、良くつかわれるABSと呼ばれる素材でも1cmあたり200〜300kg程度です。
非常に過酷な使われ方をしていると容易に想像していただけるのではないでしょうか。
ですから例え金属であっても、すぐに変形してしまいます。
そこで金型には特別に硬い鉄が使われています。 また僅かな歪みでもそこから変形が始まって金型を壊すの原因となってしまう為、非常に精密に削って作られてゆきます。金型が非常に高額になるのは、このような金型の性格によります。
(金型費は非常に高額なので、多くの製品開発でこの費用がネックになって開発が進まなくなることさえあるほどです)
以前は金型を作る技術は職人芸とされ、金型は日本やドイツなど一部の国でしか作ることが出来ませんでした。しかしCADの発達や工作機械の精度向上などによって、以前よりはずっと作りやすくなっています。
プラスチック製品を作るための金型に関して云えば、アジアでは中国・韓国・台湾など、様々な国で作られるようになってきています。
<使うことの出来る素材>
熱可塑性と呼ばれるほとんど全てのプラスチック素材を使うことが可能です。
また熱硬化性と呼ばれるプラスチック素材でも、使えるものが多くあります。
Aブロー成形
ブロー成形は内側が中空の部品を作るときに使用する量産方法です。射出成形ほど一般的ではありませんが、例えばPETボトルなどでは必ず使われる量産方法です。
<作り方>
射出成形が鯛焼きだとすれば、ブロー成形はガラス細工のイメージが近いです。風船のように中空の構造をつくるには、鯛焼きの鉄板では上手く作れないのは想像できると思います。そこで登場する方法がこのブロー成形法です。
初めに狙いの形状に必要な重さのプラスチックを、膨らまし易い形状にして準備します。この最初の材料をパリソンと呼びますが、これは先に説明した射出成形で作られます。
ただこのパリソンは一々金型を作って準備しなくともある程度市場で流通していて、それらの既存品を使うこともできます。
次にこのパリソンを十分に熱して柔らかくして、この中に空気を吹き込んで膨らまします。この時、パリソンの外側を金型で覆います。
膨らんだパリソンは金型に押し付けられて、その形状に従うと共に、そこで冷やされて固まり、狙いの形状になるわけです。
最後に空気の吹き込み口を切り落として、製品完成となります。
<長所短所>
射出成形ではできない、内側が膨らんだ(抜けない)形状を作るのが得意な方法です。
ブロー成形にも金型は必要ですが、射出成形と違って高圧がかかる訳ではないため、射出成形の金型と較べれば相対的に若干安価になります。
ただしパリソンの金型も作る場合、合計金額では射出成形より高額になることもあり金額だけでは判断できません。
この方法はパリソンを暖めたり、空気を吹き込んだりするための設備がより大掛かりです。
(空気で膨らませることができる位やわらかく、かつ溶けださない程度のプルプルの状態まで短時間で暖めるには、かなり長い加温ラインが必要なため。)装置の価格は5千万円〜1億円を超えることもあります。
射出成形と較べて、相当量が多くないと中々作って貰えない、手法でもあります。 また膨らませるだけですので、肉厚などを正確に作ることが困難で寸法精度を高めることは難しいのです。
<使うことの出来る素材>
理屈の上ではかなり幅広い熱可塑性のプラスチック素材を使うことが可能ですが、実際には余り多くの素材は使われません。 PET、PEのほか、PC、ABS位までが良く使われています。
B押出し成形
同じ断面形状をもつ長い棒状の製品を作る際に使われる量産方法です。カーテンレールや水道管、チューブ、LANケーブルの収納用カバーなどがこの方法でつくられています
<作り方>
押出成形はその名の通り、ところてんのように溶けたプラスチックを押し出して形状を作る方法です。
押出成形で使われる装置は、射出成形機に似ています。ホッパーと呼ばれるところに、製品の材料となる(溶ける前の)プラスチックを入れ、材料を成形機のシリンダーで溶かす所までは同じです。しかしシリンダーの先には金型を取り付ける場所がなく、単に出口に「ダイス」と呼ばれる枠がつけられます。
そのダイスから溶けたプラスチックが押し出されるので、出てくるプラスチックはダイス断面と同じ形状の棒状となります。
これをそのまま冷やして固め、狙い形状の棒を作るわけです。
押出成形では、冷えて固まりかけたところでもう一度ダイスに通すこともあります。これは精度を上げるための処理で、サイジングと呼ばれます
<長所短所>
押出成形の金型はダイスと呼ばれるシンプルな枠だけですので、初期費用は射出成形の金型よりもずっと安価です。また押出続ければ幾らでも長い形状を作ることができます。
最近では、木目調のシートなどを貼りながら押出する技術が普及し、多くの家庭用建材に木材の代わりに使われることも増えました。
反対にこの押出成形では断面形状しか決められないので、形状の自由度はあまりありません。限られた特定の用途で使われる方法です。
<使うことの出来る素材>
理屈の上ではかなり幅広い熱可塑性プラスチック素材を使うことが可能ですが、実際には余り多くの素材はつかわれません。
PVC、PE、ABSのほか、PA、TPE位までが使われています。
Cカレンダー成形
フィルムのような形状を作るための成形方法です。
この手法でつくられるのは当然フィルムですが、昨今のフラットパネルテレビや携帯電話の普及で、フィルムは一躍ハイテクの最先端分野となりました。 反射フィルムや拡散フィルム、プリズムシートと言った多用なシートが我々が普段使っている電化製品に組み込まれています。
<作り方>
押出成形機と同様にプラスチックを吐出しますが、押し出したプラスチックをダイスに通さずロールで薄く圧延してゆき、特定の厚みのフィルムを作り上げてゆきます。
<長所短所>
カレンダー成形は小さな装置でも吐出口から巻き取りまで数十メートルかかるので、製作するには試作であっても相当な長さを作らなくてはなりません。
そこで一般のユーザーが数十メートルだけ依頼して作る、という訳には中々行かないようです。 また薄くするほど僅かなホコリなどによって穴(ピンホール)が空いてしまうので、ホコリの少ない防塵工場やクリーンルームなどで作られることになり、設備がとても高額になるようです。
<使うことの出来る素材>
理屈の上ではかなり幅広いプラスチック素材を使うことが可能ですが、実際には余り多くの素材はつかわれません。
PET、PC、ビニールのほか、位までが流通しています。
昨今TPEやEVAフィルムへのニーズも高まっており、一部のメーカーではこれらのフィルムも製造されています。
DDIP成形/スラッシュ成形
ソフビと呼ばれる中空の人形を作る時に使われるのがスラッシュ成形、手袋を作る時に使われるのがDIP成形です。
ブロー成形と同じように中空の形状を作ることが出来、かつ小量からつくることが出来る製造方法です。
<作り方>
DIP(ディップ)成形は、その名前のイメージ通り、ドロドロのプラスチック(ゾル)にドボンと沈める(DIP)作業から付いた名前です。
まずゾルと呼ばれるドロドロのプラスチックが用意されます。ゾルは熱をかけると反応して固まる性質を持っています。
このゾルに熱したマスター型をドボンとつける(DIPする)のです。するとマスター型の周りのゾルが固まってマスター型にくっつきます。
これを引き上げて加熱乾燥炉を通すと、マスター型の周りにキレイに硬化したプラスチックの膜が出来ます。
最後に膜を裏返しにしながら剥がすと、(手袋などの)目的の形状が出来るわけです。
スラッシュ成形はDIP成形と同じ材料を使いますが、マスター型が中空になっており、その中にゾルを入れて、マスター型の周りにくっついた素材を加熱して形状をつくります。
固まったばかりの柔らかい状態で中空のマスター型から引っ張りだします。
<長所短所>
ブロー成形と較べて、簡便な設備でつくることが出来るので、小量から生産することが可能です。
反面でマスターについた厚みを焼き固めるという作り方から予想できる通り、肉厚の精度は全くありません。
なおスラッシュ成形に使われる金型は、電鋳と呼ばれる特殊な製法で作られ、安価です。
しかし、近年このようなスラッシュ型を作るメーカーはほとんどなくなっています。
<使うことの出来る素材>
最も良くつかわれるプラスチックは塩ビやビニールです。
DIP成形もスラッシュ成形も、その作り方から分かるとおり、裏返したり、引き出したりして取り出す必要があります。それ故柔らかい素材でなければ作ることができません。
E真空成形
真空成形は溶けかけの板を、形状に貼り付けて(吸い付けて)目的の形状に作り上げる手法です。
片側から貼り付けるので大体の形状は作れますが、繊細な形状は作れません。また内側にツメやボスをつけたりすることは出来ません。
コンビニのお弁当箱は大抵この真空成形でつくられています。
<作り方>
まず大きなプラスチックの板を熱風などで暖め、溶けかけた状態にします。次に下から空気をいれてプラスチックの板を風船のように膨らませ、そこに金型を差し入れます。金型には細かい吸い付け用の穴が開いています。そして膨らんだプラスチック板を一気に金型に吸いつけます。金型に貼り付いたプラスチック板は冷やされて固まります。
最後に貼り付けたプラスチック板を取り出し、周りの部分を切り落として製品の形状にします。
製品肉厚の薄いもの(1mm未満)のものはビク型と呼ばれる刃物で簡便に切り落として行くことが可能ですが、それ以上の厚みがある場合は工作機械で切り落としすることになります。
なお余り厚みの板は使えないので、製品の厚み上限は6mmとなります。
<長所短所>
真空成形でつくられる金型はとてもシンプルなので、製作期間も短く価格も安価です。 また真空成形用に多くの素材が発売されており、選べる素材も多くあります。
肉厚の薄い製品は成形サイクルも早く、完成品を打ち抜いて取り出せるのでとても安価につくれます。厚みのある製品はサイクルがとても長くなると共にカットに工作機械を使うので、価格がとても高額になります。
<使うことの出来る素材>
最も良くつかわれるプラスチックは塩ビやアクリルです。
Fゴム成形(コンプレッション)
コンプレッションはゴム部品をつくる際に使われる製造法です。
プラスチックにも柔らかくて伸びのある素材(エラストマー)が普及し始めており、ゴムとの境目は分かりづらくなっています。
強いていえばプラスチックは熱をかけると溶けるが冷やすと固まる(熱可塑性)素材を使いますが、ゴムは加熱によって固まる素材(熱硬化性)を使う点が異なります。
熱硬化性素材は再び熱をかけても溶けることはなく、こげるだけです。
<作り方>
まさに鯛焼きの作り方そのものがこの製造法です。
固まる前のゴム素材(ミラブルゴム)を鯛焼きの鉄板に入れ、フタを押さえながら数分間加熱してゆきます。
十分に焼けたところで鉄板を取り出し、開いて製品を取り出します。
冷えた後、まわりにはみ出した部分(バリと呼ばれます)をハサミで切り落として製品とします。
<長所短所>
単なる2枚の板からなる金型なので、射出成形と較べて安価に作ることが出来ます。
ゴムは加熱によってしっかり固める(架橋)ために、伸びが良く耐熱性の高い製品を作ることができます。
反面で製造サイクルが長くなりますし、仕上げ作業も多くなりますので製品単価は高額です。
<使うことの出来る素材>
各種ゴム(NPR、CR、EPDM、など)とシリコーンがこの製造法で作られます。
FRP/CFRP
FRPとは、F1レーシングカーのボディーや公園の遊具など、大きくて単品しか作らないものの外装を作るときに良く使われる方法です。
ちなみに戦闘機(F15など)の羽もこのFRPの方法の一種(CFRP)で作られています。
正式名はFiberReinforcedPlastics(繊維強化プラスチック)です。
つまりガラスファイバーを入れたプラスチックということです。具体的には不飽和ポリエステル(UP)にガラス繊維を浸した(?)ものを指します。ガラス繊維の代わりに炭素繊維を使ったものをCFRPと呼ぶこともあります。
不飽和ポリエステルは常温で液体のプラスチックで、硬化剤を入れることで反応して固まる素材です。
<作り方>
一般的にFRPはハンドレイアップと呼ばれる手作業で作られます。狙いの製品形状(マスター)の上に固まる前のFRPを重ねて作ってゆきます。
<長所短所>
金型が不要なので、初期費用は低いですが手間がかかるので量産時の製品単価は高額になります。 また手作業で作るので余り精度を出すことは出来ません。
このような短所を補うべくハンドレイアップのほかにBMCと呼ばれる方法でFRP製品を作ることがあります。
これは加熱によって固まる硬化剤を混ぜた不飽和ポリエステルと、細かく刻んだガラス繊維をまぜたタネを作り、これをコンプレッション成形で固める製造法です。 FRPである程度の数量を作るときに使われる手法です。
<使うことの出来る素材>
・金 型
・成形機
・デザイン画
・成形部品
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