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デザインと設計の違い
「デザイン」は一般的には外観意匠にかかわる部分を創り上げることを指していて、「設計」はより詳細な機構・構造にかかわる部分を作り込むことを指しています。
デザインの稿で述べた内容と比較すると、デザインは「売れる」という目標を達成するためにより広い範囲の仕事をしています。それに対して設計は、デザインが決めた枠の中でより深く、具体的で詳細な形に製品を仕上げてゆく仕事をしてゆきます。
例えば当社が頻繁に行うIoTデバイスのケース設計では、具体的には次のような作業をしています。
・外形についてデザインに従って正確な寸法を設定する
・量産時の加工技術を想定し、その加工技術で製作できる形状になるように構成部品を形づくる
・各部品のコストが妥当になるような形状を検討する
・部品同士に嵌合があればその構造と寸法を決める
・複数部品の締結方法を決め、そのための構造を形づくる
・内蔵物があれば、内部形状との干渉を確認する
・組み付けができるよう、各部品間の隙間を検討する
・複数部品を組み立てる場合、手順を考慮して矛盾が生じないようにする
割と細かくて深いですよね。
因みにデザインと設計には、どちらも英語ではDesignと訳語が充てられますが、正確に表現しようとするならばデザインは「Styling Design」、設計は「Mechanical Design」と書き分けることも出来ます。
設計の役割の重要性と難しさ
製品開発の成功を決めるポイントは、製品そのものの<有用性>、<実現性>、<経済性>の3つだとする観点があります(デザイン思考で言われる一分類)。この3つの観点を製品設計の何処にあたるかを考えると「製品の有用性」すなわちその製品が消費者にとって役に立つかどうかを決めるのはデザインの範疇になります。製品を実際に製品として作ることが出来るかどうか「実現性」と、消費者の求める価格で販売しても利益が出るかどうか「経済性」は、設計の範疇になってきます。
ですから設計はデザインと並んで、製品開発の最上流工程にあって大変重要な仕事です。
しかし設計は重要でありながら、時系列的な観点から見ると非常にデリケートで難しい側面を抱えています。それは設計作業は製品の販売期間中ずっと続くということです。
当初製品を設計する時は、ゼロからはじめるのでもちろん難しい仕事です。その設計情報を基に製品が実現され、かつそれは経済的に作れるかどうかが判断されるので、設計の良し悪しは製品開発の成否に大きく影響します。しかし実はその後も難しい設計上の問題は続くのです。
ゼロスクラッチから製品を作る場合、その後の工程で当初予見しなかった問題が次々発生します。同じような冷蔵庫を何十年と作り続けているメーカーでさえ、新機種の設計後には予見できなかった問題を次々と見つけて対応することになるので、初めて設計する製品で問題が少ないというのは奇跡的なことでしょう。言い換えれば、新製品開発では絶対に問題が発生します。
初期費用を投下して金型をつくる時、量産工程に入る時、出来上がった部品を組み立てる時、そして実際に製品を出荷した後に、新たな問題は次々と発生します。販売が増えれば更なるコストダウンが必要になります。量産においては継続的に何らかの問題が発生するのです。
こうした全ての局面で問題が見つかる度に常に設計が見直され、それを基に加工業者に修正指示が出されることになります。
つまり製品開発の難しさは、こうした継続的に発生する問題に対して、設計が常に答えを出せるかだと言っても良いかも知れません。
デザイナーの仕事は重要ですが、一度デザインが決まってしまえばその後には大きな影響はありません。部品の加工業者は製造期間中ずっと付き合う関係ですが、もしダメであれば変更することも可能です。
しかし設計者を変えることは、新しい設計者が当初の設計意図を全て理解出来るわけではないので、非常に困難です。それ故に設計者との関係は大変重要になるのです。
なぜ製品開発の失敗が起きてしまうのか?
キックスターターのようなクラウドファンディングで、ファンドを集めたものの製品を出荷できないという製品開発系のプロジェクトが1割近く存在するようです。またベンチャー投資でも投資を集めたけれど最終製品が出荷できなくない企業が、製品開発系の内かなりの比率で発生すると聞きました。
こうした失敗の原因のかなりの部分、というかほとんどが上に述べたような製品設計に起因するものだと思われます。というのもこのような失敗案件のトラブルシューティングが結構な確率で廻っていて、見かけることが多いものですから。ソフトウェアやエレクトロニクスが原因で失敗していることも多いのですが、ケースや機構といったメカが原因で失敗することも、相当多いように感じています。
そこで製品開発に取り組もんでいる方に向けて、製品設計が原因で失敗する理由をまとめました。
@そもそも設計や製造プロセスに関しての知識が圧倒的に不足しているケース
まず最も多いのが、製品設計や製造プロセスについての基礎的な知識と情報が不測しているケースです。知識と情報が不測しているせいで、技術的な問題、予算的な問題、納期的な問題、取引先との関係が悪化してどうしようもなくなる製品開発者がとても多いという印象を持っています。
技術的に設計の内容が分かっていない開発者の場合、製品化には程遠いレベルの設計で量産スタートが出来ると勘違いしてしまうケースを見受けます。1個試作する時、100個少量生産する時、1万個大量生産する時とでは、それぞれ製品設計の内容が異なります。これが理解されないまま、1個向きの設計で1万個作ろうとする開発者が結構居て、予想通り量産で動かなくなってしまうのです。
予算的に数が増えれば安くなると安易に考えて量産に突入し、後から困ってしまうケースも見受けます。そもそもの設計が安く出来ないものだと、数を増やしただけではどうにもならないものです。
納期的にそんなにかかると思っていなかった!というケースもかなり多いです。どうしても供給しなければならない時期があるのに、その直前までスタートの意思決定を伸ばしてしまい、意思決定を下した時には間に合わないというケースです。
意外に多いのが外注との信頼関係で失敗するケースです。 製造業の外注は通常の商品売買と異なり、元々利幅が非常に薄い取引です。製造業者からリスクが高い(面倒で手離れが悪い客)と判断されると、お願いしても断られてしまいます。
結果として、誰からも仕事を頼まれないような質の悪い加工業者しか付き合ってくれなくなって、モノが作れなくなるケースもあります。 買ってやる、という態度が前面に出ていて商社さんなどが良く陥る失敗です。製造業の外注は職人気質の方が多いので、頭を下げておけば安くて品質の良いものが入手できるのに、単に高飛車に出てしまっただけで失敗してしまうのはとても勿体無いと思います。
いずれの場合も、自分勝手に判断せずに周りの状況を良く見て情報を集めてから動き出せば、本来避けられるトラブルです。
A設計意思決定についての経験不足
一般的な製品開発の知識があっても陥るのがこの失敗です。
製品開発では、しばしばトレードオフとなる条件が存在します。機能とコスト、品質とコストなどがその典型です。トレードオフ条件となる場合、両者のいいとこ取りは出来ません。かならずどこかで妥協しなければなりませんが、例えば品質面での妥協は、今度は販売相手が許容するかどうかというトレードオフを引き起こしてしまうのです。
新規の製品開発では、しばしば顧客側に妥協することを強いることになります。しかしこれには相当な覚悟が必要で、多くの製品開発者は決断が出来なくなります。
顧客側の要望を絶対視する余り製造側への妥協が一切できなくなり、結果として開発が止まってしまうケースを大変多く見かけます。
おそらく製品開発の失敗で最も多い要因ではないでしょうか?
結局トレードオフの関係にある条件同士で「落とし所」は何処かを明確に出来る意思決定スキルがとても重要になります。「落とし所」はアーリーアダプターが多い当初の少量販売の時と、レイトアダプターが購入するマスプロダクションの段階で全く異なるものになります。多くの場合、大手企業で(レイトアダプター向けの)商品開発を経験した者が製品開発のプロジェクトマネージャーに着くことが多いため、ベンチャー企業の製品開発は当初はオーバースペックになり勝ちである、という点を指摘しておきます。
B海外での開発による意思疎通の問題
海外生産に開発・生産委託を行って上手く行かない、という失敗は最近はかなり減ってきたように思いますが、それでも一定数はこの手の失敗を耳にします。
海外生産は多くの場合中国での生産を意味していますが、現在では中国の技術水準は大変高いものになっていて、日本を上回っている部分もかなり多く存在します。したがってこの手の失敗のほとんどは意思疎通での問題だと思います。
実際に中国生産で問題があったとして、当社に駆け込んでくる方のかなりの比率は会話をしていても自分の主張ばかりで人の話を聞いていない人が多いように思います(笑)。
ただ、実際問題として「品質」については日本の市場は中国よりも高いものを要求するのも事実です。 こうした違いを説明した上で、多少のコストアップは許容した上で品質を上げる交渉をすると、ほとんどのケースは収束することが多いと感じています。
ただ高い品質で製品を供給することに慣れていない量産業者も多いので、国内以上に生産現場をコントロール出来るスキルが必要だとは思います。
C製品開発の意欲
あとは全体を通して感じることですが、開発者がトラブル発生した場合の耐性不足でパニックになって、なすべきことが出来ていないケースが多いと感じます。
単純に考えると、製品の製造は基本的に品位がバラつくものです。要求品位を高くするほど、「不良品が常に発生し続ける」状態に近づいてゆくだけの話なのです。製品開発に慣れた立場から見れば、要求品位を下げるか、特に気になる「不良」に絞ってそこを解消してゆくか、戦略を立てて期限内に収拾すれば良いだけなのですが。
初めての開発であれば、キャパの不足でパニックになるのは致し方ないのですが、「どうしても解決する!」という意欲さえあればほとんどの問題は何とかなります。その上経験も蓄積されるので、その後の問題も解決し易くなってゆくでしょう。
しかし、この「どうしても解決する!」という意欲がそもそも欠けてしまっていると、どうにもなりません。
中小企業の社長であれば意欲不足であることは少ないのですが、大手の委託案件はこの部分が欠けていることが多く、上手くいかないのも当然かな、と思わせられることがしばしばです。
以上4つの理由が、製品開発の失敗で良く見かけるものです。
あるべき設計手法
では、製品開発において設計はどのように進めるべきなのでしょうか?
まず最初に自社内で設計を進めるか、それとも外注に委託するかという選択を行う必要があります。
次に外注に委託することを選択した場合、どのような属性を持った外注に委託するかを判断する必要があります。それぞれについて詳細に見てゆきます。
@自社で設計人材を育成する
社内に設計人材を育成する方法であれば設計が持つデリケートな問題、すなわち継続的な設計対応に対処することが容易になります。設計が重要であるからこそ内製化するという考え方です。
ただ内製化にも次に挙げる2つの方法があり、それぞれに長所短所が存在します。
設計スキルを有する人材を採用する
設計スキルを有する人材を中途採用して設計を進めるという選択肢がまず考えられます。
この方法はいきなり設計できる人材が社内に誕生するというメリットがありますが、反面で製品開発の初期、販売に至るまでの間ずっと人材を抱えるという費用を負担しなければなりません。
それ以上に大きいのは、本当に設計能力がある人間を採用できるのかという問題です。
人は自分が分からないものは評価できませんから、設計者が十分な能力があるかが評価できるのは、自分に設計能力がある人だけです。しかしそれがないから採用する訳で、鶏と卵の話になってしまいます。
とりわけ近年は設計業務が細分化されていることが多く、設計経歴が長くとも実態としては流れ作業をこなしていたに過ぎない設計者がほとんどで、ゼロスクラッチで製品設計が出来る設計者は本当に僅かしか居ません(特に大手企業出身者は)。適切な設計者を採用するのはとても難しいでしょう。
もし、何かの縁で十分に設計能力があると信じるに足る理由がある人を採用することが出来て、かつ彼/彼女を遊ばせておく金銭的余裕があるのであれば、この方法が最適だと言えます。
自社内の人間を教育する
次に社内の人間を教育育成するという選択肢が考えられます。
この方法は既に抱えた人材を再教育するので、追加的な費用負担が発生する訳でないというメリットがあります。しかし社内の人間が設計できるようになるまで時間がかかりますし、もしかしたら設計できる水準まで到達することが出来ない可能性も考慮しなくてはなりません。
実際社内で人材を教育するのは非常に難しいと思います。ソフトウェアのコーディングと異なり、ハードウェアの設計は入門書や基本書が極めて少ないし、不十分なことが多いです。また学習のためには実際に経験する必要がありますが、経験するにはモノを作るという実地訓練が必要です。ソフトウェアと比べてハードウェアは実地訓練にかかる費用がケタ違いなのです。
もし社内の人間が、既に他の分野の設計経験があって、かつ技術の習得が非常に速いという裏打ちがあり、かつ彼/彼女を教育するために実績ある人間の指導が受けられる環境が準備できるのであれば、この方法も有りだと思います。
A外注に委託して設計する
以上のように社内で設計人材を準備するというのは、数多くの問題を孕んでいて一朝一夕に出来ることではないために、多くの場合外注を使って設計委託をする企業が多くなっています。
次に設計委託を行う場合の選択肢について考えてみます。
設計外注に委託する
外部に委託する場合、最初の選択肢に挙がるのが設計外注への委託です。
「設計」という仕事を受託してくれると明言しているので、すごくわかり易いですし、近年は海外でオフショア開発するので安くてハイレベルです、といった企業も多くあって安心できそうです。
また設計が本業ですから、いつでも遠慮なく(お金さえ払えば)対応してくれる点でも安心できます。
こうした点は設計外注のメリットなのですが、デメリットも当然存在します。
一番の問題は委託者と設計事務所の利害が一致しないということです(エージェンシー問題と呼ばれます)
委託者にとっては最終的な製品の初期費用・製造原価が重要ですが、それはこの設計の良し悪しによって決まります。後々のコスト発生要因となる不良の発生し易さもこの設計の良否で決まります。
ですから後々のコストを最小限にする「良い設計」をして欲しいというのが委託者の希望です。
しかし設計外注を受託する企業は、設計が終わりさえすればチャージが貰えるので、本質的に良い設計をするインセンティブがありません。むしろ後がどうなろうと、手離れ良く設計を終わらせた方が利益が生まれます。
そして更に難しい点は、委託者自身がそもそも良い設計か悪い設計かを判断する能力を持っていないのです。これは設計人材の採用と同じ問題です。
結局、この設計事務所は何だか凄そうだ、で業者を選定して失敗する(もしくは失敗に気づいてすらいない)ということが多い選択肢になります。
委託する設計事務所が優秀で誠意があるという根拠があるならば選ぶ価値のある選択肢です。
ちなみに設計事務所は大手の下請けをしている所が多いのですが、大手の下請けだから安心という考え方はむしろ逆だと言う点は指摘しておきます。
大手メーカーの場合、仕事が細分化されていてかつそれぞれのタスクにタクトタイムが設定されていることが多いので、CADが操作出来るだけで設計スキルが低い人間ほど使い道があるのです。むしろ独自に高い設計スキルを持った人間は使い切れないので、大手の下請け仕事から外れる傾向にあります。
量産メーカー/EMSに委託する
設計外注と比べて量産メーカーに設計も含めて依頼する方法は、最終の供給製品を前提として委託する方法ですから、委託者と外注メーカーの利害が一致し易く、エージェンシー問題が発生しづらい選択肢です。
製品原価と初期費用の予算で合意することが出来れば、安く作れるほど外注メーカーの利益は増えることになりますし、不良を出さない設計ほど外注メーカーにとってはメリットがあります。
この方法は委託者に失敗が少ない方法だと思うのでお薦めしたい方法ではありますが、問題もあります。
外注メーカーが失敗や追加費用の発生についてリスクを取らなくてはなりませんから、見積はリスクを含んで高めの設定にならざるを得ません。また数量が少ない場合はトータルの利益額が限られてしまうので、外注メーカーにしても旨味がなくて受託して貰えないことも多くあります。
予算面で合意できるのであれば、選ぶべき選択肢だと思います。
試作メーカーに委託する
最近は試作品を製造するメーカーが設計も受託するケースが増えています。
試作品業界は元々短納期対応が基本となっている所が多いため、特に納期がない製品開発などでは、すぐに実物を作ってくれるので選ばれることが多い選択肢です。
ただしこの方法には設計外注と同様のエージェンシー問題が存在します。
試作メーカーは結局試作品が出来れば利益が生まれます。しかし量産時のコストが下がることに別段インセンティブがある訳ではありません。
また試作メーカーは製品単価が非常に高い業界であり、量産時の単価設定も非常識に高く設定されることが多くなります。
納期が極めて限られていて、かつ総生産量が著しく少ない場合(数個〜十数個)、これらの不利な点が全てなくなるために、とても有効な選択肢になると思います。
デザイナーに委託する
デザイナーにデザインを委託した後、そのまま製品の供給までデザイナーが請け負うという選択肢があります。そうしたデザイナーはかなり稀であって、数として決して多い訳ではありませんが。
基本的には製品のデザインコンセプトを作った人が最終製品まで手がける訳なので、安心な方法だと思います。デザイナーは「売れる」ことを前提としてデザインする訳ですし、売れるほど自らの利益も増えるので、エージェンシー問題は発生しません。
理屈の上では良いことづくめなのですが、如何せんこのような受託をするデザイナーは極めて限られているので、そうした限られたデザイナーの仕事を基に判断せざるを得ないのですが、余りお薦めできる結果になっていないように感じています。
これはおそらくデザイナーの多くが個人事業主だということに関係しているのでは、と思います。
製造は様々なプロセスに渡る非常に幅が広くて深い知識が必要なので、組織として成果を出す必要があります。個人プレー勝ちになると、中々長期的にQCDを保った安定供給を行う体制を構築するのが難しいのかも知れません。
気の合うデザイナーさんが最終製品まで請け負ってくれて、一緒に利害を分け合えるのであれば、きっと是非お薦めすべき方法となるのでしょう。
以上、いずれの方法がベストかについては、企業毎に前提条件が変わるので何とも言えません。
総じて言えば、委託する側が少しでも知識をつけることでより有利な選択肢が増えてくるものだと思います。
設計手法についての近年の動向
以上、設計は非常にややこしい部分があることを説明してきましたが、近年の動向としてはこうした問題が少しずつ和らいでいる方向にあります。
3Dプリンター等の試作技術の進展と低価格化によって、実物を使って設計を検証することがより容易になって来ています。
外注に委託する場合でも、委託者が図面から全て読み取る必要はなく、わかり易い実物を使って評価と指示をすることが出来るので、意思疎通がはかりやすくなると同時に相手の評価がし易くなっています。
社内内製化する場合は、未熟な設計者でも実物を使うことで問題点を認識し易くなり、設計スキル向上のスピードが速まります。
こうした試作技術の進展によって、設計自体が年々身近なものになっています。
ただ3Dプリンターをそのまま量産に使うというのは、やや早計だと思います。
マスコミで騒がれているほど、3Dプリンターは万能ではありませんし、何より実用品とするには外観レベルが余りに低い完成度です。
試作以上の使われ方がされることは、当面はほとんどないだろうと思っています
参考:具体的な設計の手順
社内で設計者を育成する方のために、基本的な設計の手順をまとめました。
教育してこうした作業を行わせることができるかどうか、検討の参考にしてください。
デザインが決まった後、製品設計に入ります。
プラスチック部品に関して言えば、この設計作業はほとんどがCADソフトを使って行われます。
設計は大きく3つのプロセスで行われます。
1:「構想設計」 その製品がデザインに沿って成立するよう、構想を考えるプロセス
2:「モデリング」 その構想に合うよう、個別の部品をきちんと形にするプロセス
3:「アセンブリ」 各個の部品が連動して全体で機能するように調整するプロセス
構想設計
デザインは単に絵として成り立っているだけで良いのですが、設計ではそれが個別の部品の組み合わせになるよう、機能毎に部品として切り出ししてゆきます。
外観デザインを基にして、まずは外形の正確な寸法を設定すると共に、その寸法内で内部の機構的な構造を検討し、それに合う個別部品をレイアウトします。
より正確な寸法を基に検討を行い、個々の部品が干渉がなく成立するようにしなければなりません。
また部品同士に嵌合があればその構造を決め、あるいは締結方法を決めておきます。
最初にこの構想設計のセンスが悪いと、個別部品のモデリングはとても大変なものになってしまいます。設計としてのセンスが問われるのがこの全体設計です。
場合によっては個別部品のモデリングが上手く行かなくて、構想設計をやり直すこともあります。
モデリング
全体設計が終わると、切り出した個々の部品の詳細な設計をする事となります。
機能を満たす個々の部品を3D-CADで設計してゆきます。
部品同士の嵌合構造について、より詳細に寸法を決め、内蔵物があれば内部形状との干渉しない寸法を設定します。
各部品は当然量産時に使用される加工方法を想定しながら設計されてゆくので、使う素材、加工方法を考慮した上で実際に作れるものとして行わなくてはなりません。
例えばよく使われるプラスチックの部品を設計する場合、その部品が金型から抜ける形状になっていること、均一な肉厚になっていること、樹脂流れに従って生じるウエルドが外観に出ないようにゲート位置を設定できることなどが基本的に考慮されるポイントとなります。
そして最終的な量産を行うための初期費用(金型費)の高低を決めるのは、ひとえにこの部品設計によります。不均一な肉厚だったり、製品体裁面に大きな穴(ウエルドの原因)があったり、そもそも製品を抜く為の構造が極めて複雑になったりする設計では、金型費は跳ね上がり、あるいは製造工程で品質上のトラブルが頻発して不良率が上がって(コストがアップして)しまいます。
加工技術について一定上の知識が必要とされる所です。
ですから金属部品を使った設計をしてきた設計者と、プラスチック部品の設計をしてきた設計者では、加工技術の理解が違うのでそもそも全くスキルが違うことになります。
このモデリング作業が、設計としては一番時間がかかります。
こうした個別の部品の設計だけを大手企業から受託している設計外注は数多く存在します。
アセンブリ
最後に個別にモデリングされた部品を、CAD上で組み合わせて検証し、機能通りに動くか、何か問題がないかを検討します。各部品の干渉を調べて公差を設定するだけでなく、組み付けができるよう各部品間の隙間を検討したり、組み立て手順を考慮して矛盾が生じないようにしてゆくのがこの作業です。
こうした設計の一連の作業は全て3D-CAD上で行われます。
そして近年の傾向としてここまでデータが準備されるとすぐに3Dプリンターなどで試作品を作るようになりました。試作品等を作ってデザイン上の問題点をフィードバックしたり、加工業者に見せて量産性を確認したり、実際に組み立てて見て問題がないかを確認したりして、設計修正に反映するためです。
安価な3Dプリンターの普及はこうした試作評価の世界で、非常に活躍しています。
とりわけアセンブリの工程は実物を使うことで、非常にミスが少なくなっています。
以上3つのプロセス、「構想設計」「モデリング」「アセンブリ」を通して製品の細かな図面を作成してゆくことが設計作業ということになります。
ちなみに設計で使用されるCADソフトですが、実際のモノづくりを行う上ではミッドレンジ(60〜80万円のもの)以上のソフトが主流となっています。Solidworks、MasterCAM、pro-E、CATIA、NXなどのソフトがよく使用されています。
ここ数年は3Dプリンターブームなどから、安価で簡便なCADソフトが多数上梓されていますが、マスプロダクションの設計という観点からは今ひとつというレベルです。
安価なローエンドのCADでもかなりの設計が出来るようになっているのですが、やはりデータの作り込みが不十分で、別のCADにデータを受け渡す際に一部/全部のデータが壊れてしまうことが多く、複数の工程で数種類のCAD間でデータ受け渡しする必要がある製造業では使いづらいものだからです。
設計は基本的にマスプロダクションする前提で行われるので、そこにはそぐわないといえるでしょう。
・金 型
・成形機
・デザイン画
・成形部品
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