樹脂筐体の設計ならテクノラボ。プラスチック製品のデザイン、設計、試作、金型、量産まで製品開発のすべてをお手伝いします。


プラスチック製品に精通した設計者が設計します

○プラスチック製品特有の設計ノウハウ

製品設計の中でプラスチック部品の設計はかなり異質であり、精通している技術者は意外と少ないのです。
プラスチック部品の設計には、下記のようなノ独自のウハウを蓄積してゆく必要があります。


■プラスチックの寸法精度についてのノウハウ
金属と比べて、プラスチックの部品には大雑把な寸法しか設定できません。一般にプラスチック部品を作る際に使用される射出成形の場合、溶けたプラスチックをワク(金型)に流し込んで部品を作ります。 プラスチックは固化する際に概ね0.2%~1.5%程度収縮しますので、金型の精度が高くても部品はそれほど厳密な寸法にならないのです。またプラスチックは気温の変化で大きく寸法が変わるため、使用環境で大きさ自体が変わってしまいます。 その反面、プラスチックはやわらかく、バネ弾性が特殊なので、部品同士が干渉していてもお互いが馴染んでしまいます。こうしたプラスチック素材特有の性格は、金属部品を使って精密な寸法で設計をしていた設計者にはとても難しいものです。 素材の特性を把握した上で、抑えるべき寸法を絞るノウハウが必要とされます。

■プラスチック素材の選定ノウハウ
プラスチックの素材は非常に多種多様です。 種類ごとに物性や収縮率が異なり癖が違うのに、数値的な差がさほど明確に示されません。こうした多種の素材の中から材料を選定する作業は、金属と比べると格段に難しいものです。 理論的な知識は当然として、それ以上に経験則の蓄積も重要になるのがプラスチック素材の選定です。これはなかなかの難問となります。

■射出成形特有の形状に関するノウハウ
プラスチックの設計で一番明快な解説が多いのがこの部分です。 プラスチック部品のほとんどが射出成形と呼ばれる製造方法で製造されますが、この製造方法は「金型」を使用するため、「金型」に合わせて部品の形状設計をしなければなりません。 具体的には次のようなルールが有名です。
 ・偏肉の禁止
 ・抜き勾配の設定
 ・ゲート口の指示
プラスチック部品の設計ルールだけ出来ている本が多く販売されていますから、内容はそうした解説に譲ります。 とはいえプラスチック部品の設計者は教科書に書いてある内容を暗記し、その前提の上設計しなければなりません。

■プラスチック金型についてのノウハウ
前項の項目と合わせて、金型についての知見も当然持っているべきノウハウです。前項の教科書に従うと作れるように思える形状でも、その形状を実現するための金型構造まで考慮すると実現できないことも多々あります。 良くあるト例として、スライド構造で取出すことを想定した部品が、実際に金型を設計するとスキマが小さすぎて金型が作れないというトラブルなどが挙げられます。こうした金型に関する知見が、プラスチック部品の設計には必要となります。 欲を言えば、さらに実際に量産時に樹脂が流れて製品形状が作れるかについての基本的な経験則や、取出し(突出し)時にキズ付かずに取り出せるかなどの製造工程に対する理解があると、部品の生産時によりスムーズな立上げができるでしょう。

■量産時特有の問題(反り、ゆがみ等、成形工程で生じる問題)に関するノウハウ
恐ろしいことに、金型がキチンと作れてもプラスチック部品は量産時に金型通りに部品が作られないものです。プラスチック部品は、素材を溶かして狭い空間に急速に無理やり押し込めているという加工法なので、完成後に反り返ったり組立、歪んだりすることが非常に多くあります。 そのため部品の設計にあたり事前に部品に起こりえる変形や不具合をある程度予想して全体を設計しておくスキルが求められます。反りを抑え込む方向に留める力をかける部品勘合を考えたり、リブを設置してソリや歪みが発生しづらくするなどの対策を事前に設計に織り込んでおく訳です。 また金型を製造する際にも、起こっては困る不具合を想定して設計担当が製造の指示を出してゆきます。こうしたノウハウが乏しいと、部品の金型は完成したけれど、組立に使える部品がいつまで経ってもつくれない、というトラブルに悩まされ続けることとなります。

これらノウハウを有する設計者によって、初めてプラスチックの部品設計は滞りなく製造されるものとなります。

○プラスチック部品製造で発生する問題と解決法

実際にプラスチック部品を設計して製造すると、次にあげるような問題に直面します。 問題のの発生を事前に想定して準備しておかなくては対策もできないですので、大まかに発生しうる不具合をまとめました。


■外観不良
外観部品として作られるプラスチック部品では、以下のような不良が頻発します。
 ・部品製造工程に起因する不良(特に金型に起因するもの)
 ・部品製造工程に起因する不良(特に成形に起因するもの)
 ・部品製造工程に起因する不良(取り扱いに起因するもの)
 ・輸送に起因する不良
 ・組立工程に起因するもの
 ・顧客自身の要望が不適切な場合

個別の部品不具合については、別ページにまとめていますのでご参考ください。 さて、製造において重要なことは、こうした不良が発生した際に犯人を糾弾することではなく、解決に向けて精力を集中することです。 まず何が原因かを知らなくては問題は解決しませんが、それには工場や関係者の協力が不可欠です。初めから糾弾されるのが分かっていれば現場から正直な実情は教えてもらえませんし、それではいつまで経っても解決には近づかないのです。 当たり前のことを言っているように聞こえるかも知れませんが、それが出来ない会社がとても多いのです。 また最後に「顧客自身の要望が不適切な場合」という項目を加えました。 製造初心者の場合、そもそも当初の要求仕様が曖昧で後から工場側が認識している水準を大きく超えた要求をするケースを頻繁に見受けます。 良くあるのが、本来の販売から離れて要求水準がどんどんエスカレートしてゆき、感情的に対立が取れないパターンなどです。 こうしたトラブルは「お約束」と言って良いほど多く発生するので、外観不良ではないのですが付け加えておきました。 感情的にならないよう、ある程度製造指示に慣れた会社を介在させるのが良いかも知れません。

■寸法不良
プラスチック部品の不良として、当然もう一つ発生するが寸法の不良です。ただし、プラスチック部品で問題となる寸法不良は定義が少し難しい。というのは、プラスチック部品は使用温度によって寸法が変わりますし、多少の干渉があってもお互いが変形して馴染んでしまいます。 一般にプラスチック部品が何らかの形で寸法不良とされるのは、以下に示したものが想定される時だと言えます。それぞれについて、簡単に説明します。

問題点 具体例 解決方法
そもそも金型寸法が大きく間違っていた。 ・金型加工寸法の収縮率設定が間違っている場合。
・加工寸法がJIS標準加工公差を超えている場合。
・誤解によって誤った寸法で加工されている場合
個別の例ごとに「誰がミスをしたか」を探して「お前が何とかしろ」的な議論に成りがちですが絶対にNGです。 粛々とミスの原因を見つけ、最も追加費用の少ない方法で修正する必要があります。
部品が変形してしまっている。 ・長い板状の部品が捩じれる/反り返る
・箱の壁部分が倒れる/広がる
・棒状の部品が曲がる
部品の変形は設計・金型・成形・後加工のそれぞれの段階で修正して解決することが可能。しかし上流ほど解決しやすいため、部品の形状変更を伴っても設計で修正する方がスムーズです。 最終工程の成形で無理やり合わせこむ方が担当者は楽かも知れませんが、後々品質が安定しないというトラブルにつながりかねません。
理由はわからないが機能を満たせない。 防水、音素測定の追従性、などの機能が満たせないという状況。
・設計が製品仕様を十分に図面に反映していない場合
・設計意図が金型の製造手法に反映されていない場合
の2つがある。
いずれの場合もすでに金型が完成した後の解決はかなりの手間がかかる。設計が製品仕様を反映していない場合は、製品形状変更のアイデアで金型への追加工を施すことで解決することがある。 しかし設計意図と金型加工法が致命的に異なっている(例:防水面に突き出しを入れたり駒入れをしたりしてしまっている)場合には、最悪金型を作り替える必要がある。
実際の感性機能(ボタンの押し感やフタの嵌り具合など)が満たせなかった。 ・個別の部品で大きな較差不良はないが、全体として組立すると部品が嵌らない。
・組立はできるが可動部がきつい。
・かかるべきロックやギアがかからない。
感性調整部分は、公差指示で設定してもピッタリになることはほとんどない。 このため初めから微調整ができるように当該部分を別パーツにしたりして、トライ成形しながら最適な状況に仕上げることとなる。 そもそも金型の構造がこのような調整を想定していない場合、調整は困難なものとなる。
組立上で問題が生じた。 ・ボタンの押し加減
・蓋の締め具合
・ロックのかかり具合
などの感覚が当初イメージと異なる。
こうした不具合は組立部品点数が多いと頻繁に発生するが、組立上の累積公差で発生することが多い。 組立の手順を再検討することで解決することがほとんど。 ただし全体の設計が理解できていないと、組立手順と不具合の関係が理解できないため、初期設計者>生産技術者>品質技術者の順で解決する能力が高いと言える。
なぜか完成品の外観が気に入らない。 ・全体に見た目が安っぽい
・細かい仕上げのミスが気になる
・動きが安っぽい
など直感的な不満
「完成品は図面通りであって、その図面は承認しましたよね?」と言われても不満は残る。 見た目の安っぽさは材料色によることが多く、仕上げミスが気になるケースは製品のメリハリが不足していることが多い。動きが安っぽいのは部品肉厚が不足して反響音が大きいなどに起因する。 これら一連の対策によって、完成品の外観は一気に向上してゆく。

ものづくりにおいてはトラブルはつきものです。
単なる転売であれば、不具合は全て製造元のせいとしての製品を買わないだけで問題は回避できますが、自ら製造に取り組んでしまった以上、トラブルを誰かに押し付けても解決することはありません。
お互いが責任回避し続けて開発が機能停止に陥るだけなのです。
個々の業務を分担した企業にそれぞれ言い分はあろうかと思いますが、それらを飲み込んでゴールに向かう強い意志が必要でしょう。
こうした解決のプロセスで追加的に発生した費用については、最終段階で各関係者が話し合って負担を決めるほかないでしょう。
その場合もミスの責任という形ではなく、お互いが納得でき、かつ負担できる範囲で話し合いをすることが必須となります。
モノづくりの難しさが少しわかって頂けると嬉しいです。